うちの会社も360度評価(多面評価)を実施してみようと考え、適当に初めて失敗する。自然消滅する。そんな組織は極めて多いと思います。
失敗する一番の要因はとてもわかりやすく「360度評価制度を導入する際の最も失敗しやすいポイント」を理解せずに開始してしまうからです。
10年以上のコンサルや研修で多くの組織の評価システム構築のお手伝いをしてきた経験から「何故360度評価が失敗するのか」「どうしたら失敗を回避できるのか」について解説をしていきます。
本文の結論
「なんのためにどのように実施するのか?」
コンセプトがしっかりしていないから失敗する。
目的のセット→項目の決定→フィードバックの質向上→継続させる
実は最も難しいのは
・メンバーへの目的説明
・メンバーへのフィードバック
失敗する理由ランキング
1位 実施の目的があいまい
2位 事前説明の質が悪い
3位 フィードバックの質が悪い
4位 項目に偏りがある
5位 継続できていない
実施の目的があいまいで失敗するケース
とりあえず360度評価制度が話題になっているからやってみよう。ネット上にある情報をみながら真似してスタートしよう。
といった感じで実施するとだいたい失敗します。
そもそも360度評価制度(多面評価)とは匿名のメンバー同士が評価をし合う制度のため非常にセンシティブであり通常の評価方法とは大きく異なります。
だからこそ目的の明確化が大切です。
【よくある失敗例の流れ】
適当にやってみよう
↓
失敗する
↓
改善せずにやめてしまう
360度評価システムの目的を事前に明確化するには
評価手法を使って、メンバーのどんな部分を改善して、どんなパフォーマンスを望むのかという落とし所を想定しながら実施する必要があります。
モチベーションが低い組織→マインドを強くするために実施
ビジネススキルが低い組織→スキルを強化するために実施
ゴールを具体的に決めていくほど評価制度の成功率は上がります。
「どんな組織を作り上げたいのか」
「どんな組織織題を解決したいのか」
この定義を明確化しておきましょう
事前の説明の内容で成功率が大きくかわる
ここで改めて360度評価制度の流れを確認しましょう。
↓
②評価項目をきめる
↓
③メンバーへの目的の説明
↓
④多面評価を実施
↓
⑤フィードバック
多くの企業は②の評価項目を決めることと④のどのように実施するかに力を入れます。
しかしながら最も大切で最も難しいポイントは「③メンバーへの目的説明」と「⑤フィードバック」なのです。
事前説明の方法で効果が大きく変わる
失敗理由の第二位が事前説明の質が低いということです。
再度お伝えしますが、360度評価制度の導入が難しいのは「一般的な評価手法とは異なりメンバー同士が評価し合う非常にセンシティブな評価手法である」ということです。
メンバーが最も気にするのは「自分のことを嫌いなメンバーが不公平な評価を下すのではないか」ということです。
心理的には他人の評価を受け入れることへの怖さが反発につながります。
よくある反発
「公平でない」「意味がない」「手法が適当すぎる」「目的がわからない」
ですから事前説明では以下のような項目の説明をしっかりと行うことがポイントとなります。
・他人からのどう見えているのかを確認するためのもの
・どんな点数でもそれは他人がそう思っているという結果
・他人の評価をしっかりと受け入れ成長することが目的
・いかに素直に受け入れるかが最も大きなポイント
・そもそも他人の声に耳を傾けない人は能力が低い
・評価対象者を開示することは絶対にNG
このように事前の説明では「こんな評価は意味がない!」といった声が上がることを事前に考慮して「いいわけを言えない状態をつくる」ことが最も大きなポイントとなります。
フィードバックに失敗すると意味がない
フィードバックの時の注意点も事前説明のポイントと同じで、いかに反発をなくして他人の評価を受け入れて改善していくかがこの評価の最も大きなチャレンジです。
フィードバック時のポイントは「低い評価を素直に受け止めてもらうこと」と「高い評価のポイントをさらに伸ばしていくこと」です。
そのためには良い評価のフィードバックをまず実施して、悪い評価のフィードバックを相手がしっかりと受け入れやすいように説明していくことが必要です。
フィードバックの順番
良い評価→悪い評価
フィードバックをどのように実施するのかを経営陣はマネージャー陣とロールプレイングを事前に行うことが必要です。
フィードバックの時は特にこの評価でショックを受けやすいまたは反発しやすそうなメンバーを選び事前のフィードバックのロープレを実施することをお勧めします。
POINTフィードバックの事前ロープレを実施しよう
※最も反発しやすそうなメンバーを想定する
評価の項目に偏りがあるとうまくいかない
よくある失敗談のポイントとして、人間性に関する質問とスキルに関する質問の数の偏りがあげられます。
人間性に関する質問例
(回答選択肢:1、強くそう思う 2、そう思う 3そう思わない 4全くそう思わない)
・誠実で嘘をつかない
・成長意欲が大きい
・高い目標にチャレンジをしている
・経営者の視点を持っている
・目標達成に強い意欲がある
・他人の気持ちを考えれている
スキル面での質問例
(回答選択肢:1、強くそう思う 2、そう思う 3そう思わない 4全くそう思わない)
・仕事の効率化を意識している
・仕事が全体的に早い
・業務ごとに計画が立てられている
・商品知識が豊富である
・トラブル対応スキルが高い
・数字を意識した仕事ができている
このように人間性に関する質問とスキルに関する質問を大きく分けて、それぞれの項目数のバランスを取ることが大切になります。
例
人間性に関する質問:10項目
スキルに関する質問:10項目
多面評価は継続的に実施しない限り効果が全くでません
多面評価が成長につながるポイントは過去の評価結果を時系列で並べて、他人の評価がどのように変化しているのかを確認することが大きな成長につながります。
組織全体でも同じです。全メンバーの平均点をみれば組織に不足している能力値を確認することができます。
そのためには360度評価を継続して実施していくことが大切な前提となるのです。
試行錯誤があるのは前提ですが「まずは年1回3年間行う」などの長期スパンでの目標を据えて実施してみることをお勧めします。
360度評価制度は継続しなければ意味がない「3年間の継続」を目標としよう