このような雑な課題解決のステップを踏んでいる組織が多いのでは無いでしょうか。ここでは、着実に課題を解決し、組織力を伸ばすためにもっとも大切な課題解決に対する思考法を解説して行きます。
マネジメントで大切なことは「着実に一歩を進める姿勢」
マネジメントの基本は何かと問われれば、私は、一歩一歩改革を進めていくことだと答えます。大きい目標やビジョンを持つことは悪いことではありません。しかし、一足飛びに大きな改革をしようとするなら、それは明らかに間違いです。2つ、3つの改革を同時にやろうとするのも間違っています。たとえば、メンバーの言葉遣い一つ正せなくて、大きな話ばかりするなと言いたいです。取り組むべき課題のプライオリティを間違わないでください。
数学の問題に取り組むときには、基本問題ができるようになってから応用問題に進みますね。いきなり応用問題に取り組んでも、基礎ができていなければ、たちまち行き詰るだけです。
マネジメントにおいても同じなのです。基本的なことを一つ一つクリアして、改善していくことによって、大きな目標も達成できるのです。基礎的な課題にこそ、組織の成長の鍵が隠されていることが多くあります。「そんなことはあたりまえ」や「新卒の若手が考える内容」と認識されるような課題が基本的であり大切なことなのです。
基礎を大切にしている組織こそが、複雑な課題にも対応できる組織力を持てるのです。
ポイント:基本的な課題を飛ばさずに必ず最初に解決する
最初に取り組むべき基本事項
では、ビジネスにおける基本事項とは何でしょうか?真っ先に挙げられるのが、お客さまや上司に対する姿勢です。社内で冗談交じりにお客様の悪口を言ったり、お客様を呼び捨てで呼んだりしていませんか? 上司に対するものも含めて悪口が飛び交うような会社が、お客様を引き寄せたり信頼されたりするはずがなく、目標の達成などできるわけがありません。
それを正すのはマネージャーの仕事です。それさえできないようでしたら、ほかのことに取り組めないものと思ってください。
2つ目は言葉遣いです。さらに、あいさつや掃除、身の回りの整理整頓といった基本的な行動です。社内であいさつもできていないのに、お客様の前でだけうまくあいさつできると思いますか?
言葉遣いにしても、普段は乱暴で汚い言葉を使っていながら、お客様の前だからといっていい言葉遣いをしようとしても無理なことです。必ず底が割れます。すると、余計にお客様の心象を悪くし、信頼も得られません。
3つ目はスピードとマインドです。メールの返事1本返すのが遅い人に大きな改革ができるわけがありません。マインドというのはやる気です。自らチャレンジができているか、責任を自覚して行動できているか、自らを振り返ってください。
メンバーがチャレンジスピリットも持てず、何かあれば人のせいにばかりして、業務スピードが遅いようであれば、どんな高度な戦略をたてても、何事も成すことはできません。そんなメンバーがビジョンを達成するんだなどと言っているようなら、まず基礎的なところを無視しないよう指導し、直すようにしてください。
小さくても1つ達成すれば組織に本気度が伝わる
あいさつや言葉遣い、あるいは社内の決まり事を守るといったことはいつでもできると思われがちですが、実はこういう基本的なことほど直しにくいのです。長年の習慣で身に沁みついているからです。
ですから、だれもがあいさつをきちんとし合える組織に生まれ変わらせるまでには、時間がかかります。半年とか1年のスパンで考えなくてはいけないかもしれません。しかし、普通にあいさつを交わせるようになると、メンバー全員が、組織が変わったと気づきます。それが組織の自信になるのです。
同時に、組織をそこまで変えたら、マネージャーの本気度がメンバーに伝わります。この人は本気で改革しようとしている、言ってきたことは嘘ではないんだと認めてくれるようになります。そうなれば、次のテーマに取り組むのに、メンバーの協力が得やすくなります。
「可能思考」を広げれば次のステップは容易になる
もう一つ、あいさつができなかった組織ができるようになって変わるのが、メンバー全員が「可能思考」になることです。僕らもできるんだという気持ちが湧いてくるのです。自分を信じるその気持ちが、営業改革や商品開発の新しい仕組みづくりといった、より大きな改革に道筋をつけていきます。
最初に数学の勉強の例を挙げましたが、子育てでも共通しています。まず、あいさつを教えます。あいさつができるようになったら、何か悪いこと、間違ったことをしたときに「ごめんなさい」が言えるように教育します。さらに、食事をちゃんととれるようになろうとか、友達をいじめないとか、一つ一つ段階を追って教えることで、子どももゆっくりではあっても確実に成長していくのです。
コンサルの現場においても、挨拶がしっかりできない組織を挨拶をできる組織に改革するのに半年以上の月日をかけるケースもあります。挨拶の改革ができないにも関わらず、事業戦略にかかわる大きな改革を成功できるわけがないからです。
この繰り返しを継続できる組織のみがお本質的な成長を実現できる。
絶対2つも3つも一度にやろうとしないでください。1つステップを踏むごとにチームに可能思考が広がり、それが次の1歩につながります。目先の課題から目をそむけず、逃げないで一つ一つの課題をクリアし、マネージャーやリーダーが中心になって大きな目標に向かって行ってください。