成長に欠かせない教育スキル
教育する立場の人というのは、自分がされてきたことをなぞって同じようなやり方で教育しようとします。当然、3人の教育担当者がいれば、3様の教育方法が生まれます。教育というのは極めて属人的なものなのです。
しかし、それでは組織としての教育は機能しません。教育を受ける側の成長にバラツキがうまれ、必ず成長の遅いメンバーが出てきます。大事なのは、教育の画一化を図ること、基本的な教育の型をつくることです。
メンバーの成長が遅い組織にありがちな問題点として、次のようなことが考えられます。
メンバーの成長を妨げる6つの要因
②伝え方が悪くてメンバーの心が動かない
③口だけで、しっかりと模範を示せない
④多くの課題を一気に突きつける
⑤教育担当者や上司が勉強をしていない
⑥スキルを活かせる環境と仕組みが整っていない
成長を信じて言葉をかける
人の気持ちや思いというものは、言葉やニュアンス、態度ににじみ出るものです。
教育担当者が、教育する相手のことを
「やっぱりこいつはダメだ」
「言っても多分守らないだろう」
「いくら指導しても、いいビジネスマンにはならないだろう」
「将来、仕事を任せられるリーダーになれるとは思えない」
などと思っていると、その気持ちは100%、相手に伝わります。すると、どんな言葉を使おうと、相手が受け入れられるはずがありません。相手の可能性を信じない限り、絶対に育つことはないのです。
自分にもできなかった時期はあり、数年すれば解決することも多いので、自分のできなかったこと、できなかった時代を振り返り、信じる気持ちをしっかりと自分にうえつけましょう。
感情をコントロールする
教育・指導するのは、相手が失敗したときが多いと思います。教育担当者はその失敗にイライラしていますから、言葉がつい荒く、高圧的になりがちです。日ごろからうまくいっていないメンバーであれば、言葉はどんどんきつくなっていくでしょう。こうした言動に、相手は硬直して伸びb悩んでしまいます。
それでは全く逆効果です。失敗を犯すなど悪い状況にあるときほど、まず緊張をほぐす言い方が必要なのです。イライラをそのままぶつけても緊張が増すだけです。同じ言葉でも、話し手の感情次第で効果は全く変わってきます。
何も、きついことを言うなと言っているわけではありません。ダメなときははっきりとダメと言わなければなりません。ポイントは穏やかに伝えるということです。それぐらいの感情のコントロールはできるようになりましょう。
一度に言わない
何事でも経験者から見れば、新人さんの行動にはいくつものアラが見えます。それを一度に指摘しても、頭は混乱するばかりです。できないメンバーほど、1個ずつの課題を丁寧に説明してフォローしていくようにしてください。
運動神経のダメな人に、いろいろなことを一度に言ってもできるはずがありません。ジャンプをする際には、走り方や跳び方はもちろんのこと、手の振り方や足の上げ方なども考えなければなりません。そんなときは、一つ教えて身に着いたら次のテーマを教えるというように、段階を踏むと思います。
それと同じことです。目についた課題はあれこれ言いたくなるものですが、一度に多くのことを言っても消化できないことを理解しておいてください。
教育担当者を教育する
最初に触れたように、教育担当者は自分の体験をもとに教育に当たるものです。しかし、それが正しいとは限りません。また、どんな人にも通用する教育方法というのもありません。ですから、教育担当者は常に教育スキルの向上に努めなければなりません。
そうした努力をしている人はどれくらいいるでしょうか。個人の努力に任せていては難しいところがあります。本当に効率が良くて成果の上がる社員教育を行いたいなら、教育担当者を教育してスキルアップを図るシステムを、会社がつくるべきです。
何が大事か、どのような目線で仕事に取り組むか、お客様への対応はどうあるべきかといった基本的な教育内容を、教育担当者に改めて事前に教えることで、一定レベルの教育が可能になるのです。
スキルを活かせるポジションづくり
あなたの会社は、せっかく身に着けた仕事上のスキルが生かせる仕組みが整っているでしょうか。一つひとつの仕事が非常に難しくて習得するのに時間がかかっていませんか? スキルを得た社員が、最もそれを生かせるポジションがないということはありませんか?
社員がなかなか成長しない理由には、こうした問題もひそんでいます。仕事が難しすぎてこなせるまでに何年もかかるようだと成功体験が得られず、モチベーションが持続しません。
また、スキルを生かせるポジションがなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。これもまた、社員の不満が強まる一因となり、成長を滞らせます。新しいポジションをつくることによって、それまで見えていなかった課題克服の道筋が見えてくることもあります。そうした視点で社内体制を見直すことは、社員の成長のみならず、会社の発展のためにも大きな意味のあることです。
社員の成長が遅いのはマネージャーや経営層の責任
社内で「あいつはなかなか成長しないな」「成長が遅いからやる気にならないよ」といった言葉が飛び交っていたら、結局は、教育役のマネージャーや組織の成長を止めることになってしまいます。
まずは、マネージャー自身の教育スキルを上げること。そして、会社全体で、成長が遅い人でもしっかり教育できるシステム、成長が遅くても活躍できる組織をつくる必要があります。成長を促すための施策をどんどん打っていけるような風土が大事です。
メンバーの成長が遅いと嘆くのであれば、それは自分自身の責任であることをマネージャーも経営層も自覚して、どんなメンバーも速く成長できる組織につくり替えていってください。