新人営業研修の内容と進め方|最初に教える3原則と実践ワーク

個人スキルアップ 営業 教育・研修

新人営業研修では、最初に何を教えるべきでしょうか。

商品知識、営業トーク、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージング。営業には学ぶべき技術が数多くあります。

しかし、私が長年の研修経験を通して最初に教えるべきだと確信しているのは、それらの技術よりも前にある「営業とは何か」という仕事の意義と、成果を出す営業担当者に共通する3つの原則です。

私はこれまで数千人の営業担当者と向き合い、長年にわたって営業研修を行ってきました。

その中で、トップセールスには3つの共通項があると感じてきました。

  1. 自責思考:商品や会社だけのせいにせず、自分にできることを考える。
  2. 行動量の重視:準備や質の追求だけで終わらず、お客様との接点を増やす。
  3. 数字との真剣な向き合い方:目標と現状を把握し、数字を自分ごととして扱う。

そして、この3つを裏返すと、新人営業が陥りやすい「3つのアンチパターン」が見えてきます。

会社や商品のせいにする。質を言い訳に行動量から逃げる。数字を直視しない。

重要なのは、これらのアンチパターンを、実際に営業活動を始める前に教えることです。

失敗してから注意するのではなく、失敗する前に成長の基準を渡しておく。そうすることで、新人自身が自分の行動や考え方を見直せるようになります。

新人営業が陥りやすい3つのアンチパターン。会社や商品のせいにする、質を理由に行動量を避ける、数字を直視しない思考。
新人営業が陥りやすい3つのアンチパターン。研修の最初に伝えることで、実践後の振り返りに使える。

この記事では、私が新人営業研修で大切にしてきた考え方と、実際に使ってきたポーカー・ピアノ・勉強の比較ワークを紹介します。

さらに、自社で新人営業研修を実施できるように、8時間の参考カリキュラム、最初の2時間の進行例、講師の質問例、研修後のフォロー方法まで整理しました。

この記事でわかること

  • 新人営業研修で最初に教えるべき内容
  • 8時間の営業研修カリキュラム例
  • トップセールスに共通する3つの原則
  • 新人が陥りやすい3つのアンチパターン
  • その場で使える3つの実践ワーク
  • 研修の進め方と研修後の定着方法

対象読者:新人営業の育成を担当する経営者、営業責任者、研修担当者、現場のリーダー。

1.新人営業研修では何を教える?8時間のカリキュラム例

新人営業研修の内容は、大きく分けると5つあります。

  1. 営業の意義と基本原則
  2. 実践で使うビジネスマナー
  3. 商品・サービスとビジネスモデルの理解
  4. 営業活動の流れと各工程のポイント
  5. ロールプレイングによる実践練習

以前、私が新人営業研修を実施する際に用いてきた参考時間割は、次のような構成です。

研修内容 時間 教えるポイント
① 営業の意義と基本原則 2時間 営業の存在意義、3原則、アンチパターン、実践ワーク
② 実践的なビジネスマナー 1時間 身だしなみ、言葉遣い、顧客への配慮、情報管理
③ 商品・ビジネスモデルの理解 2時間 顧客の課題、自社サービスの存在意義、提供価値
④ 営業フローの理解 1時間 アプローチ、商談、提案、クロージングの基本
⑤ ロールプレイング 2時間 見本の観察、実践、フィードバック、再実践
合計 8時間 営業の基本から実践まで

※実施経験に基づく参考構成です。時間は休憩を含まない研修時間の目安であり、商材・営業形態・新人の経験によって調整してください。

この中で、私が最も重要だと考えているのは、最初の2時間で行う「営業の意義と基本原則」の研修です。

なぜなら、商品知識や営業トークは後から学ぶことができますが、営業に対する考え方が間違った方向に固まると、その後の育成に時間がかかるからです。

研修を成功させるために、最初に決めておくこと

新人営業研修の目的を「営業について理解してもらうこと」だけにしてはいけません。

目指したいのは、研修後に新人が次の状態になっていることです。

  • 営業という仕事の意義を自分の言葉で説明できる。
  • 成果を出すための3原則を理解している。
  • 自分がアンチパターンに陥ったときに気づける。
  • 最初に実行する具体的な行動を決めている。

ここまでできれば、その後の商品研修や営業トーク研修にも主体的に取り組みやすくなります。

2.新人営業研修は、なぜテクニックから始めてはいけないのか

新人研修というと、商品説明を覚えさせ、営業トークを練習し、ロールプレイングを繰り返す会社もあるでしょう。

もちろん、これらの技術は必要です。

ただ、知識と技術だけを教えても、成果が出なかったときに自分の考え方を振り返る基準がなければ、成長が止まってしまうことがあります。

例えば、こんな新人を想像してください。

  • 契約が取れない理由を、商品や会社の問題だけで説明する。
  • 営業リストの整理や資料作成を続け、顧客に連絡しない。
  • 目標に届いていないのに、現在の数字を把握していない。

本人は、自分なりに頑張っているつもりかもしれません。

だからこそ、後から注意されても納得できず、考え方を変えるまでに時間がかかることがあります。

私はそうならないように、まず成果を出す営業担当者の考え方を伝え、その逆にあるアンチパターンも教えています。

営業のテクニックは「何をするか」。営業の基本原則は「どのように仕事に向き合うか」。

この両方が必要ですが、初回の研修では後者の土台を作っておくことが重要だと考えています。

そのうえで商品知識、顧客理解、営業フロー、ロールプレイングへと進みます。

3.営業とは何か?「商品を売る」より大切な仕事の意義

私が新人営業研修で最初に伝えるのは、営業の存在意義です。

私が考える営業の定義は、次のとおりです。

「お客様の幸せの実現を、サービスを介して促進すること」

この定義で特に重要なのは、「促進する」という言葉です。

商品やサービスそのものが価値を持っているのであれば、説明書とカスタマーサポートだけで、お客様が目的を達成できる場合もあるでしょう。

それでも営業担当者が必要とされるのは、お客様自身がまだ気づいていない価値を発見する手助けをしたり、購入後の豊かな未来を一緒に描いたりできるからです。

同じ時計でも、営業の言葉によって感じる価値が変わる

例えば、ロレックスの購入を迷っているお客様がいるとします。

店員さんが、こう伝えました。

「とてもお似合いです。人気モデルなので、早めに予約された方がいいですよ」

もちろん、これも接客の一つです。

では、別の店員さんが自分の時計の話を交え、次のように伝えたらどうでしょうか。

「この時計は高価なモデルではありませんが、息子が家を出た記念に買ったんです。時計は、人生の大切な出来事を思い出すしおりのようなものだと思います。お子様が生まれたばかりなら、この一本にも素敵な思い出が重なっていくかもしれませんね」

どちらも時計を紹介していますが、後者は時計を持つことの意味を、お客様の人生に結びつけています。

これは研修用の例ですが、私自身にも似た経験があります。

娘が生まれた記念に、当時の自分にとって高価だったカルティエの時計を購入しました。

そのとき店員さんが、こう声をかけてくれたのです。

「素敵な思い出になりますね」

購入から11年たった今でも、その時計を見るたびに、娘が生まれた喜びや感動を思い出します。

時計そのものに加えて、家族との大切な思い出という価値が生まれたのです。

商品そのものの価値10に営業の付加価値が加わり、顧客が感じる価値が100に高まることを表した図解。
商品そのものの価値が10だとしても、営業によってお客様が感じる価値を100に高められることがある。

商品が生む幸せを仮に「10」とするなら、営業によってその価値を「100」にまで高められることがある。

その差の「90」こそ、営業が生み出す付加価値だと私は考えています。

もちろん、この数字は実際の顧客価値を測定したものではなく、営業の存在意義を理解してもらうための例えです。

10の価値を10として説明するだけなら、説明書でもできるかもしれません。

営業は、お客様の人生にその商品やサービスをどう結びつけられるかを考える仕事です。

私は、新人にその意義を理解し、営業という仕事に誇りを持ってほしいと思っています。

同時に、顧客価値を提供し続けるためには、適切な売上や利益を生み出すことも必要です。

お客様の幸せと営業数字を対立するものとして捉えるのではなく、お客様に価値を届け、その結果として事業を成長させる。この両方に向き合う姿勢を最初に共有します。

4.私が見てきたトップセールスに共通する3つの原則

私はこれまで数千人の営業担当者を見てきた中で、突出した成果を出す人には3つの共通項があると感じてきました。

少なくとも私が接してきたトップセールスについては、10年以上、この見方を覆す例に出会っていません。

これは私自身の経験から得た考え方であり、すべての営業職に普遍的に当てはまることを証明した統計ではありません。

そのうえで、新人研修ではこの3つを強く伝えています。

  1. 自責思考

    営業成果を商品や会社のせいにするだけで終わらず、自分にできる改善を考える。

  2. 行動量を重視する

    質を高めることだけに満足せず、お客様との接点を増やしていく。

  3. 数字と真剣に向き合う

    自分の目標と現状、達成までの差を把握し、数字を自分ごととして扱う。

トップセールスに共通する3つの原則。自責思考、行動量重視、数字の自分ごと化を示した図解。
トップセールスに共通する3つの原則。営業技術を身につける前に共有したい仕事への向き合い方。

3つの原則を伝えたら、その逆を教える

ここで重要なのは、まず成果を出す人の姿勢を肯定的に、強く伝えることです。

「これをするな」から始めるのではなく、「成果を出す営業担当者は、このように仕事に向き合っている」と伝えます。

そのうえで、この3つを裏返します。

営業の成長を妨げる3つのアンチパターン

  1. 他責への逃避:会社や商品が悪いという理由で、自分にできることを考えない。
  2. 行動量からの逃避:質を理由にして、必要なお客様へのアプローチを避ける。
  3. 数字からの逃避:目標や現状を直視せず、成果との距離を曖昧にする。
営業の成長を妨げる3つのアンチパターン。他責への逃避、行動量からの逃避、数字からの逃避。
3つのアンチパターンは、トップセールスに共通する3原則の裏返しになっている。

この順番が大切です。

正しい姿勢を理解したうえで、その逆の状態に陥らないように注意してもらう。

そうすることで、実際に成果が出なかったときにも、上司から指摘される前に自分で気づける可能性が高まります。

5.アンチパターンは「営業を始める前」に伝えるからこそ意味がある

ここが、新人営業研修を設計するうえで特に重要なポイントです。

アンチパターンは、失敗してから指摘するよりも、営業を始める前に共有しておくことが大切です。

なぜ、最初に伝える必要があるのでしょうか。

私は研修で、よく飲み会の例を使います。

ワーク:一次会で帰ることを、いつ伝えるか?

事情があって、どうしても一次会で帰らなければならない飲み会を想像してください。

次のどのタイミングで伝えるのが最も言いやすく、相手も受け入れやすいでしょうか。

A:飲み会の日程を決める段階で「一次会で帰ります」と伝える。

B:飲み会が始まった途中で「今日は一次会で帰ります」と伝える。

C:一次会が終わり、二次会に誘われた瞬間に断る。

飲み会で一次会で帰ることを事前に伝える場合と直前に伝える場合の比較。
同じ内容でも、伝えるタイミングによって相手の受け取り方が変わる。

帰るという事実は同じです。

しかし、早い段階で共有されていれば、相手も心の準備ができます。

これは、営業でいう「期待値調整」にも似ています。

例えば、契約前に「この部分はカスタマイズできません」と説明される場合と、契約後に初めて伝えられる場合では、お客様の受け取り方が大きく変わることがあります。

新人への指導も同じです。

営業を始める前に「この3つの考え方には気をつけよう」と伝えれば、特定の新人の失敗を責めているわけではありません。

一方、本人が営業を始め、成果が出ずに悩んでいる最中に同じ指摘をすると、これまでの努力や考え方を否定されたように感じることがあります。

その結果、本人が自分の行動を正当化し、改善までに時間がかかる可能性があります。

だからこそ、経験する前に成功の基準とアンチパターンを渡しておく。

これが、私が初回の新人営業研修を重視する理由です。

ここからは、3つのアンチパターンを新人自身に理解してもらうための実践ワークを紹介します。

6.実践ワーク①「会社・商品のせいにする」|ポーカーワーク

最初は、他責思考について考えてもらいます。

競合が安い。商品に欠点がある。会社の仕組みが悪い。上司の指示がよくない。

営業成果には、自分だけでは変えられない条件がたくさんあります。

しかし、それらを理由に考えることを止めてしまうと、成長する機会を失います。

10年後、ポーカーが上手くなるのはどちら?

新人に、次の2人のポーカープレイヤーを想像してもらいます。

Aさん:カードが配られるたびに「また手札が悪い。会場も悪いし、大会運営も悪い。だから勝てない」と考え続けます。

Bさん:「この手札で勝率を少しでも上げるにはどうすればいいか」を毎回真剣に考えます。

この2人が10年間ポーカーを続けたら、どんな違いが生まれるでしょうか。

ポーカーで手札の悪さを嘆くAさんと、与えられた手札で勝率を高めようとするBさんを比較した図解。
同じ条件でも、自分にできることを考え続けるかどうかで、得られる学びが変わってくる。

講師の進め方と質問例

所要時間の目安:20分

① 個人で考える(5分)

2人の10年後を想像し、違いを書き出してもらいます。

② グループで議論する(7分)

書き出した違いを共有し、その理由を話し合います。

③ 発表と講師のまとめ(8分)

各グループの気づきを発表してもらい、営業に結びつけて解説します。

講師は、次のような質問を投げかけます。

  • どちらがポーカーの知識を多く身につけるでしょうか?
  • どちらが毎回の経験から多くを学べるでしょうか?
  • 失敗したときの考え方はどう違うでしょうか?
  • 10年後、2人の実力や自信にはどのような差が生まれるでしょうか?

回答は勝率だけに限定しません。

知識、経験、試行錯誤の量、楽しさ、自信、成長速度など、さまざまな観点で自由に考えてもらいます。

最後に伝える結論

営業でも同じことが起こります。

売れない理由を商品や会社の問題だけにして、自分にできることを考えなくなったらどうなるでしょうか。

一方、与えられた条件の中で、どうすればお客様に価値を届けられるかを考え続ける人はどうでしょうか。

自責思考とは、すべての責任を自分に押し付けることではありません。自分に変えられることを考え続ける姿勢です。

もちろん、本当に商品や会社の仕組みに問題があれば、改善が必要です。

その問題を見て見ぬふりするのが自責思考ではありません。

問題を指摘し、必要なら改善を提案しながら、自分にできる行動も止めない。

この考え方を、営業を始める前に理解してもらいます。

7.実践ワーク②「量より質に逃げる」|ピアノ営業ワーク

2つ目は、行動量についてのワークです。

新人営業が陥りやすいのが、営業活動の準備ばかりを続け、実際にはお客様にアプローチしない状態です。

例えば、こんな行動です。

  • 営業リストを何日も整理し続ける。
  • 営業資料の細かな修正を繰り返す。
  • 完璧な説明ができるまで、お客様に連絡しない。

準備すること自体は悪くありません。

しかし、どれだけ資料を磨いても、お客様との接点を作らなければ、そこから営業成果は生まれません。

営業資料の作成やリスト整理だけで終わらず、顧客へのアプローチを増やす重要性を示した図解。
資料やリストを整えるだけでは営業成果につながらない。お客様との接点を作ることが必要になる。

行動量から逃げてしまう2つの理由

私は、行動量から逃げる原因には大きく2つあると考えています。

原因 本人の内面
① 量の重要性を理解していない 「量も大事だけど、やっぱり質が大事でしょう?」
② メンタルブロック 「断られたくない」「怖い」「面倒くさい」「たくさんアプローチしたくない」

表面上は同じ「準備ばかりしている新人」でも、原因は異なります。

量の重要性を理解していない人には、考え方を伝える必要があります。

一方、断られることが怖くて行動できない人には、成功体験を積みやすい環境や適切な支援が必要です。

この違いを理解したうえで、次のワークを行います。

ワーク:ピアノを販売するAさんとBさん

2人の営業担当者が、ピアノを販売していると想像してください。

Aさんは「質」を追求します。

ピアノの楽しさ、人生への影響、商品の品質や価格、お客様の声、購入事例などを徹底的に研究します。

そして、今はピアノを弾きたいとも買いたいとも思っていないお客様に、最高のプレゼンテーションをします。

Bさんは「量」を重視します。

多くのお客様候補にアプローチし、その中から、今まさにピアノを買おうと考えている人を見つけます。

そして、その人に特別ではない普通のプレゼンテーションをします。

つまり、次の比較です。

Aさん:ピアノを欲しいと思っていない人に、最高のプレゼンをする。

Bさん:ピアノを今欲しいと思っている人に、普通のプレゼンをする。

さて、この2人にはどのような違いが生まれるでしょうか。

講師の進め方と質問例

所要時間の目安:25分

① 個人で違いを書き出す(5分)

顧客、営業担当者、成果の3つの立場から考えてもらいます。

② グループで議論する(10分)

どんな違いがあるのかを自由に話し合ってもらいます。

③ 発表と講師のまとめ(10分)

回答を共有し、行動量が持つ意味について考察します。

講師は次のような質問をします。

  • お客様が迷惑だと感じやすいのはどちらでしょうか?
  • 商談はどちらが進みやすいでしょうか?
  • 受注率にはどのような違いが生まれるでしょうか?
  • どちらが営業の成功体験を多く得られるでしょうか?
  • この働き方を10年間続けたら、どうなるでしょうか?

このワークでは、営業の質と量の抽象的な優劣を議論したいわけではありません。

重要なのは、購入意欲のあるお客様に出会うこと自体が、大きな価値を持っていると気づいてもらうことです。

最初は楽でも、後から苦しくなる営業

Aさんは、資料を磨いている間はお客様に断られることがありません。

最初は精神的な負担が少なく、仕事をしている実感も得られるでしょう。

しかし、ピアノを欲しいと思っていないお客様に、どれだけ素晴らしい説明をしても、購入につながるとは限りません。

お客様にとっても、必要のない説明を長く聞くことは負担になるかもしれません。

結果が出なければ成功体験も少なくなり、改善の機会も増えにくくなります。

一方、Bさんは最初に多くのお客様候補へアプローチするため、行動の負荷があります。

それでも、購入意欲のあるお客様に出会うことができれば、商談は進めやすくなります。

接点が増えることで、どんな顧客が興味を持つのか、どんな説明が伝わるのかも分かってきます。

反応を見て改善する機会が増えるため、学習のサイクルも回しやすくなります。

最後に伝える結論

このワークで、新人に最も伝えたいことがあります。

「本当に商品を必要としているお客様に届けるために、行動量が必要です。押し売りをしないためにも、量を大切にしましょう」

これが、私の考える行動量の重要性です。

無理やり売るために大量にアプローチするのではありません。

本当に必要としているお客様を見つけるために、行動量を増やすのです。

もちろん、お客様の意思を尊重し、適切な方法でアプローチすることが前提です。相手が望まない接触を繰り返すことを推奨しているわけではありません。

そして、行動量を増やしながら営業の質も改善していく。

質を高めてから動くのではなく、動きながら質を高める。

ここを腹落ちさせることが、このワークの目的です。

8.実践ワーク③「数字を直視しない」|数字を自分との約束にする

3つ目は、数字との向き合い方です。

私が見てきたトップセールスは、自分の目標、現状、達成までの差をとても大切に扱っていました。

目標を正確に把握し、今どこまで進んでいるか、あと何が必要かを考え続けていました。

では、なぜ数字にそこまで真剣になれるのでしょうか。

私は、その理由の一つが、数字を「会社から与えられたノルマ」ではなく、「自分との約束」にしていることだと考えています。

ワーク:言われて勉強する人と、自分で決めて勉強する人

ここでも2人を比較します。

Aさん:親から毎日「勉強しなさい」と言われ、渋々机に向かいます。

Bさん:自分がどうしても手に入れたい未来のために、自分で決めて勉強します。

仮に2人が同じ時間だけ勉強したとすると、どのような違いが生まれるでしょうか。

講師の進め方と質問例

所要時間の目安:20分

① 個人で考える(5分)

同じ勉強時間でも、どのような違いが生まれるかを書き出します。

② グループで議論する(7分)

集中力、工夫、継続、成長実感などを比較します。

③ 発表と営業数字への接続(8分)

自分で目標を決めて取り組む意味を、営業の仕事に結びつけます。

講師は次のような質問をします。

  • どちらが集中して勉強するでしょうか?
  • 分からない問題があったとき、どう向き合うでしょうか?
  • どちらが自分で工夫し、改善を続けるでしょうか?
  • 10年後、勉強することへの姿勢にはどのような違いがあるでしょうか?

同じ時間を使ったとしても、その時間をどのような気持ちで使うかによって、得られるものは変わってくるはずです。

営業数字も同じです。

「会社に言われたから追いかける数字」と「自分が達成すると決めた数字」では、向き合い方が変わります。

営業数字から目をそらす状態と、目標と実績を確認して改善する状態の比較図解。
数字を自分ごととして扱うことで、目標と現状の差を確認し、次の行動を考えられるようになる。

営業数字と、自分の人生を結びつける

私は新人に、次のように問いかけます。

「皆さんは、自分の人生の時間をこの会社で使おうと選び、入社したはずです。未来の自分が振り返ったとき、数字から目をそらした日々と、本気で向き合った日々のどちらに胸を張れるでしょうか?」

もちろん、人間ですから、いつも前向きでいられるわけではありません。

それでも、自分の人生の時間を使って仕事をする以上、その時間を価値あるものにしてほしいと思っています。

例えば、甲子園で敗れ、涙を流しながら砂を持ち帰る選手たちの姿を想像してください。

勝てなかったから、その挑戦は無意味だったのでしょうか。

私はそうは思いません。

本気で向き合ったからこそ得られる学びや感動があります。

営業も、数字が未達だったからといって、挑戦した時間がすべて無価値になるわけではありません。

ただし、数字から目をそらさず、本気で取り組んだかどうかは大きな違いです。

「自分との約束」を具体的な行動に落とし込む

精神論で終わらせないために、実際の営業数字との結びつけも行います。

例えば、次の項目を自分で確認してもらいます。

  • 自分が達成しようとしている目標は何か。
  • 現在の実績はいくらか。
  • 目標との差はどれくらいあるか。
  • その差を埋めるために、何を改善する必要があるか。
  • 今日から実行できる行動は何か。

営業活動では、結果の数字だけでなく、アプローチ数、商談数、受注率などのプロセスも確認します。

例えば、売上が目標に届いていない場合でも、アプローチ不足なのか、商談化率が低いのか、受注率に課題があるのかによって、必要な対策は異なります。

数字を正確に把握することは、自分を責めるためではありません。

どこを改善すれば成果につながるのかを見つけるためです。

なお、「自分との約束」とは、会社の目標を無条件に押し付けることではありません。

目標の意味を理解し、その妥当性についても対話しながら、本人が納得して引き受けることが重要です。

そうして初めて、数字が自分ごとになり、主体的な行動につながっていきます。

9.新人営業研修の進め方|最初の2時間の具体的な時間割

ここまで紹介した内容を、実際の研修としてどのように進めればいいのでしょうか。

私が大切にしているのは、講師が一方的に教えるのではなく、新人自身に考え、発表してもらうことです。

そのために、基本的な研修の流れを次の5つに整理しています。

  1. 営業の意義を伝える。

    商品を売るだけでなく、お客様の幸せを促進する仕事だと理解してもらう。

  2. トップセールスの3原則を伝える。

    自責思考、行動量、数字への真剣さを、目指すべき姿として共有する。

  3. 3つのアンチパターンを事前に伝える。

    営業を始める前に、陥りやすい思考の特徴を理解してもらう。

  4. 比較ワークで考え、発表する。

    ポーカー、ピアノ、勉強の3つのワークを通じ、自分で答えを見つけてもらう。

  5. 営業との向き合い方を宣言する。

    研修での学びを、具体的な行動への約束に変える。

最初の2時間の研修進行例

この5つの流れを120分に落とし込むと、例えば次のような研修を組み立てられます。

時間 研修内容 進め方
0〜20分 営業の意義 営業の定義と時計の事例を紹介
20〜35分 トップセールスの3原則 3つの共通項をポジティブに説明
35〜45分 事前教育の重要性 アンチパターンと飲み会の例
45〜65分 ポーカーワーク 自責思考を考える
65〜90分 ピアノ営業ワーク 行動量の本当の意味を考える
90〜110分 勉強比較ワーク 数字を自分との約束にする
110〜120分 振り返りと行動宣言 学びを自分の行動に変える
合計 120分 営業を始める前の土台作り

※この120分の配分は、本記事の内容を実施しやすく整理した進行例です。実際には参加人数や議論の深さに応じて延長し、適宜休憩を設けてください。

研修の質を高める3つの進行ポイント

① 最初から講師が答えを言わない

比較ワークでは、いきなり「Bさんが正解です」と伝えるのではなく、新人に考えてもらいます。

自分で発見したことは、ただ聞いただけの説明よりも深く理解できる可能性があります。

② 個人で考えた後に、チームで議論する

まず一人で書き出してもらい、その後にグループで話し合って発表してもらいます。

これによって、積極的に発言する人だけでなく、参加者全員が考える時間を持てます。

③ 最後は必ず営業の仕事に結びつける

ポーカーやピアノの話で盛り上がるだけでは、研修の目的を達成できません。

「では、営業の仕事では何が同じでしょうか?」と問いかけ、実際の行動につなげることが必要です。

講師が重要なポイントを絞って伝え、受講者自身に考えてもらい、最後に仕事への向き合い方を明確にする。

この繰り返しが、研修を単なる知識の伝達から、行動を変える学習へと近づけます。

10.研修の最後は「学び・向き合い方・行動宣言」で締める

研修の最後に、私は参加者全員に営業との向き合い方を発表してもらいます。

作ってもらうのは、次の3つです。

  1. 学んだこと・気づいたこと

    今日の研修で、何を学び、何に気づいたか。

  2. これからの営業との向き合い方

    お客様、行動量、数字に対して、どんな姿勢で向き合っていくか。

  3. 具体的な行動宣言

    自分が実行することを、断定形で宣言する。

新人営業研修の5つのステップ。営業の意義、3原則、アンチパターン、比較ワーク、行動宣言の流れ。
営業の意義を理解し、原則とアンチパターンを学び、最後に自分の行動を宣言する。

行動宣言は、できるだけ具体的にする

例えば、次のような宣言です。

学び:自分は営業の準備ばかりに意識が向いていたことに気づきました。

向き合い方:必要としているお客様に出会うために、行動量を大切にします。

行動宣言:配属先で決めた新規アプローチ目標を、毎日やり切ります。

「頑張りたいです」「できるだけ意識します」という願望表現だけで終わらせません。

本人が納得した、具体的で実行可能な行動を、自分との約束として言い切ってもらいます。

行動目標は、商材や営業形態によって異なります。全員に同じ件数を課す必要はありません。

大切なのは、何を実行するのかを明確にし、本人が主体的に取り組める状態を作ることです。

研修を気持ちのよい話で終わらせず、明日からの行動に変える。

ここまでが、初回の新人営業研修で私が実現したいことです。

11.新人営業研修を一度きりで終わらせない|研修後の定着方法

初回の研修で考え方を理解しても、実際の営業活動が始まると、さまざまな壁にぶつかります。

断られることが続く。思うように数字が伸びない。自信がなくなり、行動量が減っていく。

こうしたときにこそ、最初に学んだ3原則が役立ちます。

ただし、研修で一度説明しただけで、すべてが定着するわけではありません。

研修を現場の育成につなげるために、継続的に振り返る仕組みを作っておきましょう。

研修後のフォロー例

タイミング 確認すること
研修直後 3原則の理解、学び、行動宣言の内容
1週間後 実際の行動量、困っていること、心理的な抵抗
2週間後 数字の把握状況、行動と成果の関係、改善点
1か月後 行動宣言の実行状況、成功体験、今後の成長課題

※上記は研修後の定着を目的としたフォロー設計例です。実施効果を保証するものではありません。

指導するときも、3原則を共通言語にする

例えば、数字が思うように伸びていない新人に対して、単に「もっと頑張ろう」と伝えるだけでは不十分です。

次のような質問をしてみます。

  • 自分にできる改善は何だろうか?
  • 必要なお客様との接点は確保できているだろうか?
  • 現在の数字と目標との差は把握できているだろうか?

最初の研修で共有した基準があれば、本人も自分の行動を振り返りやすくなります。

ただし、注意したいことがあります。

すべての問題を本人の努力不足や考え方の問題にしてはいけません。

商品力、価格、ターゲット設定、営業リストの質、目標の妥当性、育成環境など、組織側に原因がある場合もあります。

営業責任者は、新人本人の行動だけでなく、成果を生み出す仕組みにも目を向ける必要があります。

3原則は新人を責めるための道具ではなく、本人と育成担当者が一緒に改善を考えるための共通言語です。

12.新人営業研修のよくある質問

Q.新人営業研修では、最初に何を教えるべきですか?

最初は営業の存在意義と、成果を出すための基本原則を共有することをおすすめします。

特に、自責思考、行動量、数字との向き合い方の3つは、その後の商品知識や営業技術を学ぶうえでも土台になります。

Q.新人営業研修は何時間必要ですか?

研修内容や商材によって異なりますが、本記事では8時間の参考カリキュラムを紹介しています。

そのうち、営業の意義や3原則を理解するための最初の研修は、2時間を一つの目安にしています。

ただし、8時間で営業ができるようになるわけではありません。配属後の実践と振り返りを継続することが必要です。

Q.営業未経験の新人にも、この研修は使えますか?

はい。むしろ、営業を始める前だからこそ、仕事への向き合い方や陥りやすいアンチパターンを共有する意味があります。

ただし、未経験者の場合は営業用語をできるだけ少なくし、ポーカーやピアノなどの身近な例を使って理解してもらうとよいでしょう。

Q.新人営業研修では、ロールプレイングも必要ですか?

必要です。ただし、初回の研修では営業の意義や基本原則を先に教え、その後に商品理解、営業フロー、ロールプレイングへと進める構成をおすすめします。

ロールプレイングでは、先輩が見本を示し、新人が実践し、フィードバックを受けて再度練習することが重要です。

Q.新人営業研修の効果は、どのように確認すればいいですか?

研修直後の理解度だけでなく、配属後の行動変化を確認しましょう。

例えば、行動宣言の実施状況、アプローチ数、商談数、数字の把握状況、振り返りの質などが確認項目になります。

受注実績だけで判断せず、行動と学習の両方を見ることが大切です。

まとめ|新人営業研修は、営業の意義と3原則を最初に教える

新人営業研修で最初に教えたいのは、巧みな営業トークよりも、仕事への向き合い方です。

私が長年の経験を通して大切にしてきた原則は、次の3つです。

  1. 自責思考:自分にできることを考え続ける。
  2. 行動量:本当に必要としているお客様に出会うため、行動し続ける。
  3. 数字への真剣さ:数字を自分との約束として捉え、主体的に向き合う。

そして、その逆にある3つのアンチパターンを、営業活動を始める前に理解してもらう。

ここが、私の新人営業研修の核心です。

ポーカー、ピアノ、勉強の3つのワークを通じて、ただ説明を聞くだけでなく、新人自身に考えてもらう。

そして最後に、学びを自分の言葉にし、具体的な行動として宣言してもらう。

その後も現場で3原則を繰り返し振り返ることで、考え方を日々の行動につなげていきます。

私は、営業という仕事には、単に商品を売ることを超えた大きな価値があると考えています。

お客様が気づいていなかった価値を発見する手助けができる。商品やサービスを通して、お客様の人生を豊かにできる。

そして、自分自身も、営業を通じて成長することができます。

自分にできることを考え、行動を積み重ね、数字と真剣に向き合う。

その経験の中で得られる学びや成功体験、自信は、営業成績だけでなく、その人の人生にも影響していきます。

もちろん、すべての挑戦がすぐに数字に結びつくわけではありません。

それでも、本気で目標に向き合い、自分の力で考え、行動し続けた経験には、大きな価値があります。

自分が変わる。行動が変わる。営業成績が変わる。そして、自分の人生が切り開かれていく。

この研修内容が多くの組織に届き、一人でも多くの営業担当者が、営業という仕事に誇りを持ち、営業を通じて感動し、自分の人生を切り開いていってくれることを、著者として深く願っています。

組織力診断で
組織の課題が分かります

  • 経営理念が浸透してない
  • 売上が上がらない
  • 営業力が弱い
  • 約束事が徹底できない
  • 新規事業が立ち上がらない
  • 見込客の集客ができていない
  • 教育が一貫していない
  • トップが常に悩んでいる
  • 任せられない風土
  • 優秀な部下がいない
  • マネージャーが不足している
  • 役職者が増えすぎている
  • コミニケーション力が低い
  • 全体的にモチベーションが低い
  • ヒアリングができてない
  • 社長が自分らしくいれていない
  • メンバーの愚痴が多い
  • 打ち手がいつも中途半端
  • ひとのせいにする文化
  • 管理と営業が対立している
  • 営業力の個人差が激しい
  • 情報共有がされていない
  • 経営理念が浸透してない
  • 売上が上がらない
  • 営業力が弱い
  • 約束事が徹底できない
  • 新規事業が立ち上がらない
  • 見込客の集客ができていない
  • 教育が一貫していない
  • トップが常に悩んでいる
  • 任せられない風土
  • 優秀な部下がいない
  • マネージャーが不足している
  • 役職者が増えすぎている
  • コミニケーション力が低い
  • 全体的にモチベーションが低い
  • ヒアリングができてない
  • 社長が自分らしくいれていない
  • メンバーの愚痴が多い
  • 打ち手がいつも中途半端
  • ひとのせいにする文化
  • 管理と営業が対立している
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