これまで多くの企業を見てきましたが、PDCAがきちんと回っているのに、利益が出ていない会社を私はほとんど見たことがありません。
逆に、数字がなかなか変わらない会社を見ると、かなりの確率でPDCAのどこかが止まっています。
だから私にとってPDCAは、古い経営理論でも、会議で使うための単なるフレームワークでもありません。
会社の数字を動かすための、極めて実践的な仕組みです。
ところが実際の現場では、
「PDCAを回そう」
と当たり前に意識しながらも、Planはある。改善案も出る。アイデアも次々に出る。それなのに、なぜか数字は変わらないという組織がとても多いのが現状です。
多くの組織を見てきて感じるのは、PDCAが回らない会社ほど、Plan自体はたくさん出ているということです。

会議で新しいPlanを増やすだけでは、PDCAは回りません。「やること」だけが積み上がっていきます。
Planはある。アイデアも次々に出る。それなのに、なぜか数字は変わらない。そんな組織があまりにも多いことです。
PDCAが回らない会社の問題は「Planの質が低いから」とは限らないと思っています。
むしろ、もっと手前です。
決めたことが実行されたのかを確認していない。つまり、「Do」と「Check」が甘すぎる。
ここが大きい。
会議で良さそうな案を出して、「じゃあ、これでいきましょう」と盛り上がる。ところが、誰がやるのか曖昧。期限も曖昧。次の会議では別の議題に移り、前回のPlanの確認が弱い。
そしてまた、新しいPlanが追加される。
私は、こうして実行も振り返りもされないまま社内に残っていく施策を、「消化不良プラン」と呼んでいます。
PDCAを強くする第一歩は、すごいアイデアを考えることではありません。
決めた一歩を、実行し、確認し、終わらせることです。
この記事では、PDCAとは何かという基本を押さえたうえで、PDCAが回らない会社で実際に何が起きているのか、そして会議をどう変えればPlan→Do→Check→Actionがつながるのかを、営業現場の具体例とともに解説します。
PDCAで組織が強くなる。本当の役割とは?
PDCAとは、
- Plan:計画
- Do:実行
- Check:評価・検証
- Action:改善・継続・撤退
を繰り返しながら、仕事や施策を改善していく考え方です。
ここまでは、多くの人が知っています。
問題は、知っていることと、会社で本当に回っていることはまったく別だということです。PDCAをもっと実務的に定義すると、こうなります。
「PDCAとは、改善のためのフレームワークというより『戦術の当たりを見つけるための組織的な実験システム』である。」

PDCAは、正解を考え抜くのではなく、試しながら「当たり」を見つけていく仕組みです。
この捉え方をすると、PDCAの見え方がかなり変わります。
最初から正解のPlanを考え抜くことが目的ではありません。
仮説をつくる。試す。数字を見る。続けるのか、変えるのか、やめるのかを決める。そして次を試す。
この一連の速度と精度を上げることがPDCAです。
PDCAが回らない会社では「P」だけが増殖している
PDCAが止まる典型的な流れは、こうです。
【PDCAが回らない会社のバッドフロー】
会議でPlanを出す
↓
実行責任者が曖昧
↓
期限も曖昧
↓
実行したか確認しない
↓
Checkされない
↓
完了も撤退も決まらない
↓
次のPlanが追加される
↓
「消化不良プラン」が増える
これ、かなり多くの会社で起きています。
会議では「営業の掘り起こしを強化しよう」「紹介をもっと増やしよう」「サイトを改善しよう」といった話がどんどん出る。
一見、活発な会議です。
でも、翌週に聞くと「あれ、誰がやるんでしたっけ?」「まだできてません」「ちょっと忙しくて……」となる。
これはアイデア不足ではありません。PlanをDoに接続する解像度が足りていないのです。
さらに厄介なのは、前のPlanが終わっていないのに、上司や経営者がまた新しいPlanを思いつくことです。

前のPlanが終わっていないのに、新しいPlanを追加する。これを繰り返すと、現場には「未完了のやること」だけが積み上がります。
勉強にたとえるなら、参考書を次々に買ってくるけれど、一冊も最後までやり切らない受験生に近い。
参考書の冊数は増えます。でも、学力は増えません。会社も同じです。
施策の数ではなく、決めた施策をどこまで実行・検証・完了できたか。ここを見ないと、PDCAは永遠に「やっているつもり」で終わります。
PDCAの本質は「1000枚のカードから当たりを引くこと」
経営や営業では、どれだけ考えても、実際にやるまで結果が分からないことが大量にあります。
たとえば、1000枚のトランプの中に当たりが5枚だけ入っているゲームを想像してください。当たりを引くにはどうすればいいでしょうか。
ものすごく頭のいい人を集めて、「どのカードが当たりだと思う?」と3時間会議をすることでしょうか。違います。
カードをめくることです。しかも、できるだけ質を保ったまま、たくさんめくることです。

大切なのは、会議で当たりを予想し続けることではなく、質を保ちながら多くの施策を試すことです。
これがPDCAの感覚に近い。
施策Aを試す。外れた。ではBを試す。Bも弱い。Cを試す。Cが大きく伸びた。ここで初めて「当たり」に近づきます。
だから、正しく実行した結果として施策が外れた人を責めるのは、私は違うと思っています。外れたこと自体は検証データです。
問題なのは、カードをめくらなかったことです。「やる」と決めたのに、実行されなかった。これでは当たりか外れかすら分かりません。会社に学習が一つも残らない。
PDCAでは、「失敗したこと」と「実行しなかったこと」を分けて考える必要があります。
会議のアウトプットは「やりましょう」で終わらせない
たとえば営業会議で、過去のNG顧客リストが十分に活用されていなかったとします。
悪い会議では、こんなアウトプットになります。
【悪いアウトプット】
「NGリストは貴重だから、もう一回ちゃんとアプローチしよう」
方向性は正しいです。でも、これでは動きません。誰が?いつまでに?何件?どんなトークで?何%なら成功?何%ならやめる?何も決まっていないからです。
では、実行できるレベルまで落とすとどうなるか。
【良いアウトプット】
- 対象:過去1か月のNG顧客リスト50件
- 担当:佐々木さん、木下さん
- 施策:オプション無料の特別サービスを含めたトークで再アプローチ
- 行動量:50リスト
- 開始:明後日から
- 確認:来週の会議で報告
- 目標:再アポ率25%
- 最低ライン:10%
- 判断:10%以上なら継続検討。下回るなら撤退または別案へ変更
ここまで決まると、会議で出たアイデアが「実行可能なPlan」に変わります。
私は、会議の質は「いいことを言ったか」ではなく、会議が終わった瞬間に、誰が何をすればいいか分かる状態になっているかで判断したほうがいいと思っています。
PDCAを速くするなら「始める前に、撤退ライン」を決める
高速でPDCAを回すというと、「とにかく早く動くこと」だと思われがちです。それだけでは足りません。
重要なのは、実行前にプランのジャッジの基準(撤退ライン)を決めておくことです。
先ほどの例なら、目標:再アポ率25%、最低ライン:10%と先に置いておく。
なぜこれが大切なのか。基準がないと、結果が8%でも「まあ、少し取れたし続けようか」となる。5%でも「もう少し様子を見よう」となる。そうして、効果の薄い施策がゾンビのように会社に残っていきます。
逆に、事前に基準を決めておけば、Checkのときに迷いにくい。

PDCAを速く回すには、始める前に「どこまで下がったら撤退するか」を決めておく。
Planで基準を置く ➔ Doで実行・計測する ➔ Checkで基準と比較する ➔ Actionで「継続・改善・撤退」を決める
つまり、Checkの目的は結果を眺めることではありません。次の意思決定を速くすることです。これだけでも、PDCAの回転速度はかなり変わります。
PDCAを会議で回す「イツダレシート」
では、これを組織でどう運用するか。私がまず入れたいのが、イツダレシートです。特別なシステムでなくても構いません。スプレッドシートでもExcelでもいい。1つのPlanを1行で管理し、基本項目を以下のようにします。
【イツダレシートの基本項目】
プラン | 目的 | 担当 | 期限 | アクション内容 | 成果基準 | 備考
ここで重要なのはフォーマットより、運用ルールです。
ルール1:完了か撤退になるまで絶対に消さない
一度シートに載せたPlanは、「オンゴーイング」「完了」「撤退」のどれかで管理します。完了または撤退が正式に決まるまで、ずっと残します。
これだけで「前に決めた施策、どうなったんだっけ?」が減ります。さらに大きいのは、経営者やマネージャーが思いつきで Planを増やしにくくなることです。
ルール2:毎回の会議で全行を見る。1行も飛ばさない
会議の必要な議論が終わったら、「では、イツダレシートを確認します」と全行を上から確認します。飛ばしません。残っているということは、確認する必要があるということです。
普通の議事録との違いはここです。議事録は「何を話したか」を残すもの。イツダレシートは、「何を実行し、いつ終わらせるか」を追うものです。
ルール3:「成果の約束」より「行動の約束」を追う
マネジメントで厳しく見るべきなのは、成果そのものだけではありません。「絶対に10件受注する」は約束し切れない。しかし、「50件にこのトークでアプローチする」は行動の約束です。
成果が出なかったら、責めるより検証する。でも、決めた行動自体が実行されなかったなら、なぜできなかったのかはきちんと確認する。
まとめ|PDCAが強い会社は「一歩一歩を確実に進める会社」
PDCAが回らない会社を見ると、Planがないわけではありません。むしろPlanはたくさんあります。
問題は、決める ➔ 実行する ➔ 測る ➔ 判断する ➔ 終わらせる、または次へ進むという一連の流れが閉じていないことです。
だから私は、PDCAが強い会社とは、派手なアイデアを次々に出す会社ではないと思っています。
一歩一歩を確実に進めていく会社です。
まずは次の会議から、決まったPlanを一つも宙ぶらりんにしないこと。

PDCAが強い会社は、派手なPlanを増やす会社ではなく、一つひとつを確実に完了させる会社です。
「誰が」「いつまでに」「何をするか」「何をもって判断するか」を決める。そして次の会議で、1行も飛ばさず確認する。
PDCAは、知っているだけでは何も変わりません。カードをめくって初めて、会社は学習を始めます。



